何をやっても結果が出ない人の「個人差」を考える
これまで『停滞期の原因を「消化」「吸収」「代謝」「排泄」の順番で解説して来ました。
前回の「停滞期対策:応用「チートデイ」の理論と実践」に続き、今回18記事目は「何をやっても結果が出ない人」について解説していきます。ここから先の記事は個々の細かな症状や感染症、代謝別のアプローチへ移行して参ります。
導入編として「個人差」について考えます。
家系によって体格差があるのはよくある話です。兄弟であっても、同じ生活環境にも関わらず性格や体付きに差が生じてしまうのは何故でしょう?
ボディメイクで言う「個人差」は、環境や食事内容、ホルモンバランス、遺伝の発現率、確率的親和力など…様々なものが折り重なって生じています。
母親の血を受け継いだね。父親の血を受け継いだね。こんなふうに「個人差」が話されていますが、その実態をもう少し深堀りしていきます。
私たちの体は「代謝」によって細胞が増えたり死ぬことで歳に応じた変化を遂げます。また、ホルモンの分泌量によって身長が伸びたり、男女でハッキリと異なる変化を遂げたり、老います。
この代謝全てを支えているのは「タンパク質の代謝」です。このタンパク質の合成や分解によって細胞やホルモンが調節されていますが、このタンパク質の代謝を担うのが「遺伝子」です。私たちは遺伝子によって個人差を生じています。
遺伝子であるDNAは、細胞核内でmRNAを生成し、mRNAは核膜から出た後、粗面小胞体内のリボソームに情報を手渡し、タンパク質の合成を開始します。
タンパク質の合成は、「バリン」「グアニン」「イソロイシン」…色々なアミノ酸をどの順番でどれくらい結合させるかによってタンパク質の種類や機能が決定されます。
ここで完成するタンパク質は、筋肉の素材やコラーゲン、酵素や免疫タンパク質など様々です。病気に強い。筋肉質である。このような個人差はどのタンパク質をどの程度作れたか?の積み重ねです。個人差とは、遺伝情報によるタンパク質合成量の違いであると言っても良いでしょう。
ただ、タンパク質のような複雑にアミノ酸が結合した物体は構造に違いが生ずることがあります。
例えば「酵素」は温度やpHによって活性が変化するように、小さな変化に影響されることがあり、とても繊細です。体内でせっかく合成した酵素も、環境や遺伝情報によって形や量が微妙に違うことがあります。
酵素は、「補酵素」のビタミン類と「保因子」であるミネラルが揃うことで機能が発揮されます。ビタミンやミネラルの分子構造は一定ですが、酵素の構造に変化があるとうまく結合できない場合があるのです。
例えば、ビタミンCは白内障に見る水晶体の酸化ストレスを防ぐ効果があります。また免疫向上やコラーゲンの生成にも大きく関わるビタミンです。
夫婦で同じ食事をしていたにもかかわらず、白内障になるひとがいたり、ずっと肌が綺麗な方、病気になりやすい方など、個人差が現れることがあります。もしかしたら、その方の酵素の量やビタミンCの結合のし易さや、ビタミンの利用用途に偏りがあるのかもしれません。
この酵素とビタミンやミネラルの結合のし易さを「確率的親和力」と言います。また、ビタミンの利用用途の違いを「ビタミンカスケード」と呼びます。
その人それぞれの体質によって必要な栄養バランスが異なり、ダイエットや増量方法が変わってくるのは、このような背景も折り重なっているからです。
カロリー計算や腸内環境、PFCバランスを基礎戦略としながら、さらに踏み込んで「個人差」を見ていくことで、健康維持のために優先すべき栄養がわかりやすくなってくると、体作りはとても面白いです。いつまでも若々しく、元気で美しい体を作っていきましょう!