高脂肪食で起こる耐糖能低下を回復させるには?①
これまで『停滞期の原因を「消化」「吸収」「代謝」「排泄」の順番で解説して来ました。
停滞期の原因について、具体的な症状別の話に移行しています。今回第24記事目は、前回の「症例:ダイエットと低栄養症」に続き、「高脂肪食で起こる耐糖能低下の対策方法」について解説していきます。
低糖質が流行っているのは、何と言っても「結果が出やすい」からではないでしょうか?「糖質さえ食べなければ良い」というシンプルで節制感がない事と「インスリンの分泌を抑える」というこれまでの低脂質ダイエットの対極にある方法も「物珍しさ」と相まってブームとなりました。
この低糖質の減量方法を注意する人の意見には『インスリン抵抗性を引き起こす』というものがあります。
インスリン抵抗性がなぜ起きてしまうのか?これは過去の記事でご案内したこともありました。腸内環境が悪化することで、肝臓に異物や酸化生サイトカインが蓄積すると、肝機能が低下します。すると肝臓で糖質を一部蓄えておく機能や血中の遊離脂肪酸のコントロールが上手くできなくなってしまう。このようなことを書かせていただくことがありました。
中でも遊離脂肪酸の上昇はインスリン抵抗性に直結します。そして、インスリン抵抗性が遊離脂肪酸値の上昇を促進してしまう悪循環を生みます。
遊離脂肪酸とは、食べた脂質が血中を流れる時の状態と思っていただくと良いです。中性脂肪になるための素材で、脂肪が燃焼される時に血液へ放出される物質でもあります。
遊離脂肪酸が高濃度で長時間血液を流れていると、「小胞体ストレス」というタンパク質を合成する細胞内小機関の機能を低下させてしまい、さらに遊離脂肪酸そのものは界面活性性を持っているので、過剰下では内循環器系に負担をかけます。そのため2型糖尿病のようなインスリン感受性がもともと悪い方の場合、血糖値コントロールを行うためだとはいえ、安易な低糖質食と、そう言った食事に伴う高脂質食を実施するのはおすすめできません。。
遊離脂肪酸はインスリンが正常に分泌されている人であれば、多すぎる分(カロリーオーバーする場合など)は中性脂肪に変換されるため、血中の遊離脂肪酸そのものの量はコントロールできます。もちろん、運動が出来ている人であれば、体脂肪から放出された遊離脂肪酸を筋肉細胞へ素早く取り込み、燃焼できますから、遊離脂肪酸濃度が上がりすぎてしまうこともないでしょう。
ある人には、低糖質があう。あの人はロカボが合う。あの人は低脂質が合う。色々な個人差と、色々な体質変化がありますが、その実態はインスリン抵抗性の原因と程度です。
正解中で新しい減量方法が発明されていますが、その全ては「低糖質」「低脂質」「カロリー制限」「絶食」この5種のいずれかに属します。これらのダイエットパターンの狭間にまるでグラデーションを描くようにしてダイエット方法が誕生しています。
ですが、ダイエット方法が星の数ほどあるように、個人差も千差万別です。十把一絡げに他の方と同じPFCバランスで脂質量を決めることは不適切な場合があるのです。
さて、高脂質食によるインスリン抵抗性は運動と組み合わせることで防げますが、NACのような抗酸化生のサプリメントを摂取することで改善することができます。高脂質食をされていた方は運動とセットでNACを摂取されると良いでしょう。
また、インスリン感受性は「炎症が蓄積すると悪くなる」ということを書かせていただくことがありました。EPA・DHAのような抗炎症性エイコサノイドとして働く脂質は有効に働きます。
ただ、EPA・DHAそのものは非常に酸化しやすい脂質です。そのため、EPA・DHAは加熱しないで摂取したい成分です。サプリメントでも冷蔵保存が推奨されます。酸化しやすいEPA・DHAですから、ビタミンE、αリポ酸など脂溶性の抗酸化物質、もちろんここでもNACを摂取されるとさらに高脂質食中のインスリン感受性の低下を防ぐことができるでしょう。