パフォーマンスを高めるには筋肉だけではなく「脳」の働きが大切。パフォーマンスアップと「両側性機能低下」の関係。
日常生活の中で様々な身体活動を行なっています。
身体の両側に位置する腕や脚に着目すると、重いものを床から持ち上げるような場合には、腕や脚は両側同時に筋力を発揮し、歩行や走行時には腕や脚は一側ずつ交互に働きます。
スポーツ動作ではボートのロウイング、水泳の平泳ぎ、バタフライでは両側の体肢を左右対称に同時に活動させますが、ランニングや水泳のクロール、背泳ぎでは腕や脚は交互に動かします。
一般に、両側の腕や脚で同時に筋力を発揮すると、最大の能力を発揮しようとしているにも関わらず、それぞれの腕や脚の能力が一側単独で筋力発揮をした時と比べて低下してしまいます。
つまり、一側の体肢で単独に最大筋力を発揮した場合の方が筋力が小さくなります。
この現象を「両側性機能低下」といわれていて、左右の同名筋を同時に活動させた場合に多く観察されます。
例えばアームカールをする時に両腕同時に行う場合と片手ずつ行った場合に片手でアームカールを行った場合の方が筋力が大きくなります。
筋力だけではなく反応速度についても両手で同時に反応するよりも、片手で単独に反応した場合の方が反応時間が延長することが解っています。
この両側性機能低下が起こるメカニズムに関与している可能性として「大脳半球間抑制」という神経機構の働きの可能性があります。
動物の大脳は、左右の大脳に分かれていてそれらは「脳梁」と呼ばれる太い束で繋がっています。
日常生活で何か物を取るとき、身体を動かす時、トレーニングをする時など全ての動きは脳から指令が出されて行っています。
右手、右足などの右半身を動かす時は左の大脳。
左手、左足などの左半身を動かす時は右の大脳から指令が出されます。
この時に片方の大脳が活性化すると、反対側の大脳が抑制するという働きが起こります。
この「大脳半球抑制」の働きにより「両側性機能低下」という反応が起こります。
ですので、トレーニングを行う時は、筋力向上ももちろんですが、脳の働きも意識しながらトレーニングを行うことが非常重要です。
特にスポーツパフォーマンスを高めるためには、筋力だけでは補えない場面がたくさんあります。
そのスポーツの特異的な動作でトレーニングを行うことでスポーツパフォーマンスをより高めることができます。
重量上げやボート選手のように両側同時の筋活動を要求されるスポーツ選手にとっては一側側のトレーニングより両側性のトレーニングの方が有効で、自転車選手や短距離走のように左右交互の動作をするスポーツ選手にとっては両側性のトレーニングよりも一側性のトレーニングもしくは左右交互のトレーニングの方が有効的です。