何をやっても痩せない人と脂質異常症との関連
これまで『停滞期の原因を「消化」「吸収」「代謝」「排泄」の順番で解説して来ました。
停滞期の原因について、具体的な症状別の話に移行しています。今回第21記事目は、前回の「花粉症を治すと停滞期を打破できる意外な理由」に続き、「脂質異常症を正しく知って停滞を打破する方法」について解説していきます。
前回の記事では、花粉症やアトピーに見る免疫過剰が酸化ストレスを蓄積させてしまう結果、インスリン抵抗性が悪化してしまう。というお話をしました。インスリン抵抗性とは、一言で言うと「栄養の受け取りの上手さ」を言いますが、これは糖質に限ったことではありません。脂質の受け取りの上手さも向上していなければダイエットは難航してしまいます。
LDLという肝臓機能を表す項目があります。通称「悪玉コレステロール」と呼ばれていますが、このLDLが高いと動脈硬化や脳卒中のリスクが増えてしまうため「どうやって下げようか」が非常に注目されています。このLDL、本当に悪役なのでしょうか?コレステロールの代謝を確認してみましょう。
まず、体内のコレステロールの7割は肝臓で生産されていて、LDLとはコレステロールをたくさん含むタンパク質のことです。LDLは全身を巡りながらコレステロールを各細胞に運搬していく働きを担っていて、HDL(善玉コレステロール)は余ったコレステロールを回収する役割を担っています。
悪玉コレステロールという印象が悪い名前で呼ばれていますが、脂質性の栄養を実際に細胞へ運んでいるのはLDLなのです。決して悪いものではありません。
健康やダイエットを考える上で「脂質異常症」は避けたい状況ですが、LDL値が少なければ万事解決ではありません。LDL値が低いのも性ホルモンの低下や脂溶性ビタミンの運搬低下などのトラブルの原因となります。LDLは130mg /dlあると理想的です。
重要なのはLDL値に捉われた場当たり的な解釈ではなく、栄養の受け取りが悪い状況を避けることが脂質異常症の先に潜む停滞期や動脈硬化を防止する上で重要な着眼点です。
さて、どうやったらLDLの受け取りが向上するのでしょうか?ここで前回の記事で割愛したエイコサノイドの登場です。
エイコサノイドとは、ホメオスタシスと似て、体内環境を一定に保つ作用があるホルモン様物質です。「ホメオスタシス」はホルモンや自律神経を介して血糖値をダイナミックに操作します。一方エイコサノイドは睡眠を誘発したり子宮や気管支の平滑筋を収縮させたりするような、もっと細かなアクションを担うものです。
エイコサノイドには1〜3系統まであり、1系統と3系統は抗炎症作用を持っていて、2系統は炎症促進作用を持っています。
前回の記事では酸化ストレスが蓄積するとインスリン感受性が低下すると言及しましたが、LDLやホルモンのように脂溶性の物質こそ酸化ストレスの注意が必要で、停滞期打破の鍵となります。
よく、「サバやイワシみたいな青魚を食べましょう」というアドバイスを受けたことがある方は多いと思います。それは、EPA・DHAが単純に体脂肪を燃やすから。という意味以上の効果が秘められています。EPA・DHAはエイコサノイド3系統の減量として利用され、抗炎症作用を発揮してくれます。
さて、文脈からしてEPA・DHAを食べましょう。という結論が見えてきました。脂質の摂取で需要なのは量ではありません。バランス=比率が重要です。エイコサノイドの主な原料は「アラキドン酸」「EPA」が代表的ですが吸収部位が同じなのです。
そのため脂質の摂取量を増やしたところで「比率」が変わっていなければ、目的のEPA・DHAは十分に摂取することはできないのです。
アラキドン酸は牛肉の脂肪分に多いと言われています。また、大豆油に多いリノレン酸からアラキドン酸は合成できます。そのため、通常の食事だとアラキドン酸過多になりやすく、花粉症をはじめとした炎症体質やインスリン感受性を誘発しやすいです。
また、EPAと聞いてオメガ3を思い付いた方もいらっしゃるかと思います。EPAは、アマニやエゴマオイルに含まれるαリノレン酸から合成することもできますが、あまり効率が良くありません。目的のエイコサノイドの調整には非効率です。脂質全体の「比率」を考えねばなりませんから、食材選びの時点で青魚を増やした上で他の脂質の摂取量を減らすことが最も効率が良いでしょう。
さらに、脂質異常症の改善を目的にした健康数値の改善を目標にする場合、栄養を組み立てるはEPAの摂取に加え、自身を流れるLDLが現状酸化してしまった状況にないか?細胞膜の構造まで注意を払うと数値改善は効率的に進みます。
EPAが体内で代謝され、各細胞膜に蓄積するには2週間ほどかかると言われています。サプリメントも併用してEPA・DHAを摂取しつつ、LDLそのものの酸化除去にCoQ10、そして脂溶性ビタミンを摂取しながらLDLが本来担うべきビタミンの運搬を促進させ、さらにタンパク質と食物繊維の摂取量を増やすと数値改善も期待できるようになります。