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高脂質食による耐糖能低下③長期ダイエット経験者こそ注意すべき落とし穴

これまで『停滞期の原因を「消化」「吸収」「代謝」「排泄」の順番で解説して来ました。

前回の記事では、「高脂質食に伴う耐糖能の低下を回復させる方法」について言及しました。今回第26記事目は、前回、前々回に続き「耐糖能対策が通用しなかった場合と、長期ダイエッターの栄養調整の落とし穴」について解説していきます。

前回、前々回の記事で言及した内容を要約すると、「体内のPUFAを還元することで、耐糖能は回復する。ビタミンEとビタミンC、そして耐糖能がひどく低下している場合にはNACを摂取するとよい。

というお話をいたしました。

また、耐糖能からは論点がズレますが、解糖系が活性しない期間が長くなると、体内の二酸化炭素濃度が減る。すると「ボーア効果」による酸素交換効率の低下と、各栄養の運搬効率の低下で代謝を落としてしまうために、耐糖能が低下したように感じる。というようなお話がありました。

他にも過去、耐糖能の低下ではないものの、インスリンを積極的に分泌しない期間が長いと糖質を摂取してもインスリンの分泌量が必要量に間に合わないことがある。インスリンの分泌量は10日間ほどで回復する。ということを書かせていただくこともありました。

今回は同じく高脂質食が長期化することで起こる血糖値コントロールがうまくで来ないケースとしてダイエット経験者や、ダイエットを長期間継続して来た方のこそ陥りやすい「PFCバランスの落とし穴」について言及します。

健康的にダイエットをしたいと思えばこそ気になるのは「いかに筋肉量を減らさないか?」ここはコンテスト出場の有無に関係なく人生において大切なテーマです。

血糖値を低く保つことで体脂肪は燃えますから、低糖質のような血糖値コントロールを食事内容からコントロールしてしまう方法は、理にかなっています。

ただ、よくあるミスに「脂質も少ない低糖質食」があります。

一見脂質も少ない低糖質は、カロリーも少ないですから確実に痩せられそうです。なぜ脂質が少ないと失敗しやすいのでしょうか?

低糖質で減量をしようと試みる場合、一般的には脂質の摂取量を目標カロリーの60%以上にしましょう。という目安があります。脂質をβ酸化(分解)させるとアセチルCoAが生産されるのですが、このアセチルCoAが飽和するとピルビン酸脱水素酵素を阻害する役割を担ってくれます。

ピルビン酸脱水素酵素とは、解糖系で得られる最終生産物のピルビン酸を作りにくくする酵素で、体内で糖を燃料として使えなくなる効果を持っています。このような現象を「ランドル効果」と呼びます。

本来ならダイエット中は血糖値が下がるので筋肉を分解してしまうのですが、この現象をブロックすることができます。

低糖質食での脂質量の目安は60%以上ですが、その理由は解糖系を阻害して筋肉の分解を止める意図があるからなのです。

ただ、ダイエットを長い間継続している方の一部には「脂質代謝が苦手で逆に太ってしまう」と仰る方がいます。

なぜインスリンが分泌されにくい低糖質食なのにこのようなことが起きるのでしょうか?耐糖能が低下しているからなのでしょうか?

原因はいくつかありますが、今回はそのひとつ。アドレナリンの分泌不足が原因である場合を考えましょう。体脂肪の燃焼は、HSL(ホルモン感受性リパーゼ)が体脂肪(中性脂肪)を脂肪酸に分解することから始まります。

アドレナリンはHSLを活性する作用を持っているので、血糖値が下がった時や、空腹時、運動している時などは体脂肪が燃えやすくまります。

しかし、「ダイエットを長期間行っている」ということは、血糖値が低い期間が長かったということでもあります。血糖値や脂肪分解のためだけにアドレナリンが分泌されているだけだったなら問題ないのですが、

ストレス過多な環境で生活している場合や、コーヒーなど、カフェインを用いてアドレナリンを過剰分泌させるような習慣がある方は、アドレナリンの貯蔵が底を尽きてしまい、適材適所でアドレナリンを分泌できなくなってしまいます。

「ダイエット中はストレスコントロールが肝心だ」とアドバイスするトレーナーが多いのは、そうしたアドレナリンの分泌コントロールができなくなった時の体脂肪燃焼効率の低下を危惧するアドバイスである場合が多いです。

さて、アドレナリンが十分に分泌できない状態になると、アドレナリンと似た作用を持つコルチゾルなどの分泌も低下します。すると、甲状腺ホルモンなど体脂肪を燃焼するために一役買っていた他のホルモンの分泌量も低下してしまいます。

摂取カロリーの60%を脂質で占める正しい低糖質を実施していたにも関わらず、体重が増えてしまうのは、アドレナリやコルチゾル、甲状腺ホルモンなど複数のホルモン分泌量の低下が慢性して「なぜ体重が増えるんだ?」と首を傾げたくなる現象に繋がってしまうのです。

このような経験をして来た方々が到達するのは、「脂質も糖質も少ないダイエット」です。『燃焼できないのだから、燃焼の悪さに合わせて減らせば良いじゃないか』と測った結果、確かに体重が落ちるのです。

しかしこう言った手法が通じるのは、半月から1ヶ月です。
長期にわたる低糖質・高脂質食の影響を本当の意味で解決するためには段階があります。

❶カフェインをやめる
❷空腹が起きる前にタンパク質と糖質を捕食(目安1日5食・100g〜130g /日)
❸ 体重が落ちるまでは❶、❷を守りつつ脂質も少なくする。(タンパク質は体重×1.5〜2.0g/日)脂質は60%以下(残りのカロリーを埋め合わせる程度に)
❹マグネシウム、ビタミンC、ビタミンD、グルタミンの摂取

ダイエット論でよく聞く話に「同じ食事は体が慣れる」「食べなければ痩せる」と言った論調が多いですが、なぜ効果があった方法が今無効なのか原因があやふやな状態を解明しなければ、ダイエットは筋肉が削げ落ちるだけの、健康や理想から到底かけ離れたものに変わってしまいます。

なぜ痩せないんだ?と理解に悩んだ時ほど、「食べなければ良いのではないか?」と明確そうなものに縋りたくなってしまいますが、本当の解決ができなければ、その後に続くダイエットは「食事を減らし続けなければならない苦痛」との我慢比べになってしまいます。

今回は「耐糖能が低下したように感じる他の要因」として落とし穴になりがちなことを取り上げました。ぜひ精神論ではない、健やかで健康的なダイエットで人生の質も上がる食生活を築いていきましょう。

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